昨年12月に解散した元PUBG部門のXhanZ(現Sengoku Gamingストリーマー)とinko(現PUBG MOBILE部門コーチ兼マネージャー)によるオンライン対談の記事になります。

PUBGプロ当時のこと、プロを引退した理由、今の仕事についてなど、様々なテーマで熱く語り合ってもらいました。
あまりの内容の濃さのため、今回は前編のみ、後編はまた後日公開とさせていだきます。
それではお楽しみください。

プロを引退した理由・今の仕事を始めた理由

――「まずは自己紹介からお願いします。」

XhanZ Sengoku Gamingのストリーマーとして活動しているXhanZです。普段は福岡デザイン&テクノロジー専門学校でe-sportsプロゲーマー専攻コースのPUBGの講師をしています。よろしくお願いします。

inko Sengoku Gaming PUBG MOBILE部門のコーチ兼マネージャーを担当しています。よろしくお願いします。


――「プロ選手を続けず、Sengoku Gamingで別の道に進むことを決めたきっかけや心境を教えてください。」

 

XhanZ そうですね。最後のPUBG WINTER INVITATIONAL(以下、PWI)2020が始まる前くらいから、自分のポテンシャルに限界を感じていたというのは一つの理由ではあります。

でもそれ以前に、講師の仕事をしていて、「育てる側」に立って仕事をしているのがとても楽しくって。

今の若い子達がメキメキと成長していて、そこに携わって、生徒達がプロになっていく過程を見ているのが楽しいというのが一番大きいところではありますね。

 

inko りんちゃん(XhanZのあだ名)は今の仕事に携わってから活き活きしてるよね。

 

XhanZ うん、めちゃくちゃ楽しい。eスポーツ関連の仕事をしたいという自分の一つの夢が叶ったというのはある。

あと単純に講師の仕事をしながら、新しい公式大会のフォーマットでプロ活動をしていくのは厳しいというのもあったね。

ストリーマーっていう配信活動にも興味はあったから、戦国にお世話になってきたのを何かしらストリーマーとして恩返しできたらという気持ちもあって。

それでストリーマーもやることにしたっていう感じかな。

 

inko 本当良い例だよね。りんちゃんくらいじゃない?

PUBGプロの中でも、専門学校の講師をやっていくという道を開拓していったのは。

 

XhanZ 確かにあまり多くないね。先行者だからかわからないけど、姉妹校との講師の集まりで締めのあいさつを任されたりするよ。

 

inko それはイジられてるだけじゃない?(笑)

 

XhanZ そうかも(笑)まあ結構知っていただけているということでね。

まとめると、講師やストリーマー活動をやっていくことで少しでもeスポーツ業界に寄与できればなと思ってます。

はい、次inko。

 

inko 自分がプロ選手を続けなかった理由は、端的に言うとPJSで優勝できなかったからかな。

というのも、結構PUBGのプロをやりきった上で結果が出なかったからね。

大学1年のときにPUBGと出会って、1年生のときなんて暇さえあればずっとPUBGをプレイしてたしね。

自分の中では、イーブンな状況で「この選手と撃ち合いたくないなー」って感じる選手はいなかったし、しかもこれ以上ないくらいのメンバーでチームを組めたしね。

その中で自分がチームの主幹になるオーダーとしてやらせてもらった結果、優勝が出来なかった。

ちょうど就活のタイミングも重なって、そういう実績になった以上、結果主義であるプロかつ次のPUBG JAPAN CHALLENGE(以下、PJC)に挑戦し続けようというのは選択肢から外れてしまったという感じだね。

 

XhanZ すっごいわかるよその気持ち。もう俺達何回優勝逃したんだろうな・・。

 

inko 3年プロやって優勝できなかったね。

 

XhanZ いやー本当何回も挫折しかけたけど、そのたびに戦国にサポートしてもらって、続けて続けて・・最後まで優勝出来なかったね。

 

inko 正直最後のPWI2020でドン勝を逃したとき、「ここが限界なんだな」って思った。

 

XhanZ そこは俺も自分のポテンシャルに限界を感じたっていうところに繋がってくるね。

 

inko うん。PUBGのプロとして出来ることは全部やり切ったかなという感じではあったしね正直。

 

XhanZ そうだね。同じチームだから当然だけど、inkoがそう思っているのは肌で感じるところはあったね。

大会が終わって今後のことをチーム内で話し合っているとき、inkoは就職するかeスポーツ業界でやっていくかどうかで迷ってたよね。

セカンドキャリアとしてeスポーツに携わる判断をしたのはどういう理由があったの?

 

inko そうだね。最初にあった選択肢は、

「プロとして新フォーマットのPJCに挑戦する」「eスポーツとは一切無縁の普通の社会人として頑張る」

もう一つはりんちゃんみたいに、「eスポーツ講師」という道も運営の岩元さんに提示してもらっていて、その3つで考えてた。

いざPWIが終わって、そのどれかに決めましょうとなったとき、やっぱり自分はeスポーツに携わることが好きなんだなって。

しかも今しかやれないことだから、このチャンスを逃したくないなと思ってたんだよね。

 

XhanZ うんうん。

 

inko そこで一番の決め手になったのが、PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE(以下、PMJL)の開幕だね。

「Sengoku Gamingのコーチとして力を貸してくれない?」って岩元さんに声をかけてもらって。

コーチという仕事自体には前から興味はあったし。

PUBG競技シーン発足当時から関わっていたから、そこで得た知識や経験値には自信があるから、何かしら力になれるだろうなと思って決めたね。

 

XhanZ 確かに、inkoのオーダーはすごかったしね。あんまり言いたくないけど(笑)

 

inko そうだね。俺のオーダーはすごいよ(笑)

 

XhanZ inkoがコーチをしていることがきっかけで俺もPUBG MOBILEをプレイしたり、PMJLを観てるんだけどさ。

戦国(PUBG MOBILE部門)の動きが当時の戦国(PUBG部門)って感じするよ本当。

懐かしいな、あの真ん中の空いているところにスーっと入って安定して5位以上の順位を取るやつ。

 

inko 戦国らしくて懐かしいでしょ。

 

XhanZ 俺たちPUBG部門時代に成し遂げられなかった理想的なプレイを、PUBG MOBILE部門の子達に実現してもらうっていうのは夢があるよね。

 

inko 本当にそうなんだよね。俺達がやってこなかった、かつてのライバルチームがやっていたプレイとかも出来るしね。コーチ目線だからこそ要求できることだね。

 

XhanZ 熱いねーPUBG MOBILE。受け持ってる生徒達にもPUBG MOBILEをプレイしている子は多いから、いつか特別講師としてinkoを呼んでみたいな。

 

inko いいねそれ。いつでも呼んでよ(笑)

話題は二人の仕事の内容へ

 

inko 最近はどんなことしてるの?

 

XhanZ 最近かー。ありたがいことに、講師のほうが忙しいね。

 

inko 最近忙しそうだもんね。

 

XhanZ 新しく1年生が入学してきて、みんないろんなゲームやってるんだけど、PUBGのスクリムに出場している子とかもいたりして。

どんなことっていうと難しいなー。

新しいことで言うと、最近始めたことがあって。

最近はプレイ面の指導以外にもトークスキルを学ぶ授業を受け持ってるね。

 

inko あーそっちかなり気になるかも。どういう感じなの?

 

XhanZ ほらプロゲーマーってゲームが上手いだけじゃなくて、インタビューの受け答えとか、スポンサー企業やファンの方、あとは大会会場でも色々な方に会うからコミュニケーション能力って大事でしょ。

それって勝手に身に着く人もいれば、得意じゃない人もいるから。

しかもこのスキルって一般企業に就職するとしても大事だと思うんだよね。

俺は現役のときインタビューお化けって呼ばれてたくらいだから、そのあたりはしっかり教え込んでるね。

 

inko なるほどね。インタビュー全部担当してたもんね(笑)

 

XhanZ うれしいことに評判良いんだよね。生徒同士でインタビューさせあったりで楽しい授業だと思う。

最近は本当”先生”してるなーって感じする(笑)

 

inko しっかり喋れるっていうだけで活動の幅広がるしね。

Youtubeで自分のプレイの解説動画を上げてるプロとかね。

 

XhanZ これは自分の経験談なんだけど、「自分にはプロ選手以外道がない」っていうマインドだと追い込まれすぎてきついと思うんだよね。

自分の手に職をつけるっていう程じゃないかもしれないけど、スキルがあることでプロを目指すうえでのメンタル面は相当楽になるっていう作用もあるね。

プレイ面だけでなく、そういうスキルを持った生徒を輩出できるよう、先陣を切っていきたいね。

 

inko いいねー。XhanZ先生頑張ってください。

特別講義を行うXhanZ先生

プレイヤーから、教える立場になって変わったこと

 

XhanZ 逆にinkoに俺から聞きたいのは、選手とコーチの違いかな。

俺も講師をやっていて、選手目線と講師目線の違いがちょっと難しいなと思ってて。

 

inko プレイヤーとコーチの違いか。いざ言葉にするとなると難しいね。

 

XhanZ そうなんだよね(笑)

 

inko まあでも軸はプレイヤーとしてオーダーを担当していたときと変わらないかな。

俺達が現役のころってPUBGのコーチってそんなに一般的じゃなかったじゃん。

終盤のほうはアナリスト兼コーチっていう人も出てきたけど。

そう考えると、元々選手時代からコーチングみたいなことはしていたのかなって。

戦国はもちろん、その前に2つのプロチームを経験していて、その頃からチームに対して戦略の考案を行うっていうところは変わってないね。

今日(対談を実施した4/30)もこのあとPUBG MOBILEの選手達と戦略について話すんだけどさ。

自分の価値観を押し付けないっていうことを選手時代から大事にしていたんだよね。

第一優先は選手。表に立つ、試合で頑張るのは選手で、あくまでも俺達は裏方っていのは徹底してる。

 

XhanZ うんうん。そう考えると講師とコーチの違いってそこまでないのかもね。

俺以外の他の講師の方々は全員本業でコーチをしているしね。

いかに選手たちを気持ちよく試合に出してあげられるか、とかね。

 

inko そうだね。俺達もそうだったけど、楽しくゲームをプレイできているときが一番強いしね。

練習も本番も楽しんでほしいよね。もちろん甘やかすわけじゃないけど。

もしかしたらPUBG MOBILE部門の選手達は今が人生で一番楽しい状態かもしれないから、嫌々ではなくとにかく楽しくプレイしてほしいね。

日本一を取るっていうところへの妥協はないし、甘やかすことはないけど、絶対威圧的にならないとかは徹底してるかなと思う。

 

XhanZ あーそうなんだ。聞きたいのが、コーチをやっていて辛いことってある?

あとはモチベーションが下がってしまっている選手への対応をどうしているかっていうのも聞きたい。

ずっと同じゲームをプレイし続けるって、プロ選手でもなかなか出来ないことだったりするでしょ。

そういうことってinkoが体験しているのか聞きたい。

 

inko ありがたいことにモチベーションが低い選手はいないから、仮定の話にはなっちゃうんだけど。

もし戦国に、「PUBG MOBILEをプレイするのが辛い」っていう子がいたら、もちろん相談に乗るけど、本当に辛いなら止めないかな。

例えば俺がPUBGへのモチベーションが下がっていったときにどうやって持ち直したかの話なんだけど。

 

XhanZ あーいいねそれ聞きたい聞きたい。

 

inko PUBGを始めた当時ってただの趣味だったんだけどさ。「PUBGは趣味じゃなくて仕事なんだ。」ってマインドを変えたんだよね。

「趣味としてやるには、正直楽しくない。」っていう時期があって。

これが仕事だと考えたときに、毎朝起きて支度して電車に乗って出勤して、夜遅くまで残業して帰ったら夜で・・・っていう仕事のイメージと比較してみたんだよね。

実際プロとしてお金を稼いでいたから比較できたわけなんだけど。

 

XhanZ うんうん。

 

inko 自分で生活リズムを作って、起きてエイム調整して練習してフィードバックして、っていう生活とね。

普通の仕事とプロゲーマーどっちがいいか考えたとき、俺は100:0でプロゲーマーだって思って、そこからモチベーションを高く保てたんだよね。

「俺はプロゲーマーとして頑張っていこう」って。

もちろんこれはプロゲーマーが楽だっていう話ではなくてね。

 

XhanZ わかるわかる。

 

inko この経験談を選手に話してみて、それでもモチベーションが低くて辞めたいっていう話だったら、止めないかな。

 

XhanZ あーそのモチベーションの上げ方いいね。生徒から相談されたときの参考にする。

 

inko いいよ参考にしても(笑)

まあほら、好きなことを仕事にできるってどれだけ幸せなことかっていうね。

あと戦国でコーチをやっている中で、辛いことって一切ないんだよね。

PUBG MOBILE部門の選手達って、びっくりするほど良い子達なのよね。

 

XhanZ おー。

 

inko っていうのもさ、eスポーツのトップリーグでプレイしていて、しかもリーグ3位なんだよね。

つまり国内トップの選手なのに、めちゃくちゃ俺とかLos(PUBG MOBILE部門のもう一人のコーチ)の話をしっかり聞いてくれるんだよね。

俺も現役時代そうだったんだけど、ゲームが上手っていう自信があってプロになってるわけだから、他人の意見を素直に聞けない部分って絶対あるじゃん。

 

XhanZ あるねー絶対あるそれは。俺達もメンバーを選ぶときに、他者の意見を尊重できるのも能力だって特に重視してたしね。

 

inko 最初はPUBGのプレイヤーがPUBG MOBILEのコーチをやることに関して不安はあったんだよね。

でもPUBG MOBILE部門の選手達は、本当にびっくりするくらい素直に受け入れてくれるし、反省会で言ったことを次の日から実行してくれるんだよね。

 

XhanZ うわーいいねそれ。コーチとしても気持ち良いね。

 

inko だからこそ下手なこと言えないなっていう責任を感じられるね。

あと唯一、強いて言えばだけど、辛いことは一個だけあった。

選手達が出場をしている大会を観るのは楽しくもあり辛くもあるね。

 

――観られる側から観る側に変わったことの話題へ

 

XhanZ あーわかる。俺ですら同じ戦国としてPMJL観てるの辛いもん(笑)

うわー、誰々が倒されたーやばいーとかでハラハラする。

俺達が現役でやってるときのスタッフさん達の気持ちがやっとわかった感じ(笑)

 

inko そうそう。そこだけだね。辛いっていうかきついって感じかもしれないけどね。

昔さ、戦国にXhanZ、Brostが入ったときの一番最初のPaRあったでしょ。

あれ俺観戦してたんだけど、途中から観るのやめた(笑)

 

XhanZ あの頃全然うまく行かなかったもんね(笑)

 

inko 大会期間中に泣きのLINEを送ってきたの覚えてる?

 

XhanZ 送ったねー(笑)

 

inko eスポーツってさ。やるほうは自分の責任だからある程度しょうがないって思えるんだけど、観てる側の「何もしてあげられない」っていう無力感は辛いよね。

全然上手くいかなかったラウンドが終わったとき、どうやって選手と接したらいいかわからなくて。

こっちが気分沈んでちゃ駄目だしね。

 

XhanZ うんうん。そう考えると俺達がオフライン会場で全然だめだった時の話なんだけどさ。

同伴してくれたつっちーさん(戦国スタッフ)はめっちゃ笑顔で出迎えてくれたよねいつも。

 

inko そうそうそうそう。あれ良かったよね。

 

XhanZ 俺あの立ち回り方好きだったな。

「そんなに落ち込んでどうしたんだよー!」っていうあの感じに救われたよね。

本人は素でやってるのかもしれないけど(笑)

 

inko つっちーさんってPUBG観てて内容わかってたのかな。

 

XhanZ いや多分わかってなかったからこそ温かく迎えてくれたんだと思う(笑)

 

XhanZ&inko (爆笑)


ここまでご覧いただきありがとうございました。前編はここまでとなります。

後編の公開はゴールデンウィーク期間中を予定しております。